山梨市
松崎一裕さん(37歳) 智美さん(35歳) 大樹君(4ヶ月)ご一家
横浜市出身。パンづくりの仕事に携わる中、食材自体を自分の手でつくりたいと考え、山梨市の萩原フルーツ農園で働きながら果樹栽培を勉強。この秋に独立し、加工・販売までを視野に入れた農業経営を目指している。4ヶ月前、長男が誕生。現在、妻・智美さんの設計で新居の計画が進行中。
自分の手で果物をつくりたいと山梨の農園で働くことになった松崎さん。この秋には独立して自分の畑を持ち新居の準備も着々と進んでいます。
富士山、南アルプスなどの遥かな山並みを望む笛吹川フルーツ公園。
ここから車で数分の場所にある松崎一裕さんの果樹園には、今、若い木々がしっかりと大地に根を張り始めています。
松崎さんが、山梨市に暮らすようになったのは4年あまり前のこと。東京や横浜に支店を展開するレストランで、パンやケーキづくりに携わっていた松崎さんは、以前から食材に興味を持っていましたが、中でも気になったのがレーズンでした。「レーズンはトルコ産やチリ産がほとんどで、国産は本当に少ないんです。それで、できれば、自分でレーズンを作ってみたいなと。都会に少し疲れていたこともあって、地方で果樹栽培の仕事に就こうと決めました」。
フルーツといえば山梨。そう思った松崎さんは、山梨の農業大学校に入学する準備を進めながら、新農業人フェアなどにも参加していましたが、ある人を介して知り合った萩原フルーツ農園のオーナーの勧めで、実際に働きながら農業を学ぶことになりました。サクランボ、桃、ぶどう…、初夏から秋まで次々に最盛期を迎える農園で果樹全般について勉強した松崎さんは、この秋に独立。現在は、自分の畑で果樹の苗木を育てています。「木を見ては、葉っぱが一枚枯れたとか、虫がついたとか、毎日ドキドキしています。でも、そこで、今度はこうしてみようか、などと考えるのが楽しいですね。これからは、果物の栽培だけでなく、加工や販売のことも考えなければと思っています」。
都会にはない、人との深いつながりがすごく楽しい。
山梨に来て一番大きな出来事、それは生涯の伴侶となる智美さんとの出会いでした。「萩原フルーツ農園で売店を建てる時に建築を依頼した工務店で、設計、施工管理を担当したのが彼女だったんです」。お二人の交際はこれをきっかけにスタートし、結婚。4ヶ月前に、長男の大樹(たいじゅ)君が誕生しました。大きい木は、鳥たちの止まり木となり、小動物の住処ともなる。この子もいつか、このようにまわりの拠り所となる人間になってほしい。大樹君の名前には、こうした願いが込められているそうです。
松崎さんご夫妻は、現在、新居の建築準備を進めています。設計はもちろん、智美さんです。「父の別荘も兼ねた私達の家は、勝沼にある古い蔵の構造体をそのまま使い、太陽の暖かさや自然の対流を活かした家にしようと思っています」。
松崎さんが山梨に来て驚いたのは、人間関係が濃いことだったといいます。「例えば、新しく建てる家の敷地に立っていると、みんなが覗いていくし、お年寄りの人たちは中まで入ってきて、30分も話し込んでいったりする。自分の畑を借りるときには、人間関係の難しさを感じたこともありますが、都会にはない、こうした人との深いつながりがすごく楽しい。田舎暮らしのコツは気負わずにやっていくことだと思います」。
松崎さんご夫妻は、これから近くの山に行ってどんぐりを拾い、それを育てて大樹君の記念樹にするとのだとか。新しい家の庭に、どんぐりの実が落ちる日が、今から楽しみです。
休みの日には、近くのフルーツ公園などを散歩する
新しい畑では、ぶどうの苗木が逞しく成長している
ぶどうの一房一房を愛でるように眺める
丹精込めて育てたぶどうが、今年も見事に実った
好奇心いっぱいの大樹くん