松下さんの住まいからは裏山のような甲府・武田の杜。甲府駅から車で30 分ほどのところにあり、秋には紅葉を楽しみながらトレッキングができます。
趣味は山登り。
山好きが高じて甲府へ移住。
「十年ほど前に父に誘われ、なんとなく登ってみたら意外と気持ちが良くて。以来、すっかりはまり、一人でも行くようになりました」。最近は、月平均3~4日、年間40日ほど山へ登っていると話す東京出身の松下藍さん。山梨へ移住するきっかけも、その山登りにありました。「私はフリーランスでCG制作を請け負っていて、その日も自宅の仕事部屋で作業をしていたのですが、ふと『こんなとき、窓の外に雄大な山の稜線が見えたら素晴らしいだろうなあ』と思ったんですよね。近くに住めばもっと頻繁に登りに行くこともできるし、山の近くで暮らしたいという思いが急速に膨らんでいきました」。早速インターネットで情報を集め、細々とした事情も考え合わせた上で、中央線沿線の甲府市周辺にターゲットを定めたと言います。「引っ越しに当たって、一番気になったのがエリアでした。どのあたりがどんな雰囲気の街なのか、治安はどうか…。こういったことは、住んでいる人に聞くのが一番と思い、甲府市の出張相談会がある日に、有楽町にあるやまなし暮らし支援センターを訪ねました」。そこで出会ったのが、こうふコンシェルジュ成澤治子さん。具体的なアドバイスもさることながら、年齢が近くてお互いノリも良かったことで、すっかり意気投合し、閉館時刻まで盛り上がったと言います。そして、この出会いが決め手となり、2016年5月、愛猫とともに甲府にやってきました。
東京にも山にも近い絶好のロケーション。
思い立ったら、登山に行ける。その気軽さも、気に入っています。
松下さんの住まいは、甲府市北西部の静かな住宅地にある3DKのマンション。近くにスーパーマーケットやコンビニエンスストア、レンタルビデオショップもあり、とても暮らしやすいにもかかわらず、ところどころに田畑が残り、のどかな風景が広がっています。さらに、部屋の窓からは、富士山や甲斐駒ヶ岳の雄姿を日々愛でることもでき、「これで家賃は駐車場込み月5万円。マンションの人たちも皆良い方々で、ほどよい距離感で楽しくお付き合いをさせてもらっています」と嬉しそうに話します。
「仕事関係で週に一回東京へ行くのですが、ここからなら、車でも電車でも、片道1時間半~2時間程度。十分に日帰りが可能です。もちろん山も近く、南アルプスは高速道路を使わず簡単に行けますし、北アルプスも、東京から行くことを考えれば半分の時間で行けるので、思い立ったら出かけられる気軽さも気に入っています。こちらへ来てわかったのですが、この辺りには気軽に登山が楽しめる低山がたくさんあり、山の充実度は想像以上。フリーランスで時間の束縛が無いので、昨夏の登山シーズンには、平日にテントを担いで登り、登山を満喫しました」。成澤さんには移住した後も困ったことや気になることがあれば相談したり、たまに会ったりしているそうで「おかげで人の輪も広がり、孤独を感じたり、遊びに行く人がいなくて困ったりしたこともありません。本当に来てよかった」と松下さん。満ち足りた笑顔から、甲府暮らしの充実ぶりが伝わってきました。
「藍ちゃん」「治子さん」と呼び合う仲の良い成澤さんと松下さん。面倒見がよくパワフルな成澤さんは、甲府暮らしを始めた松下さんにとって、頼りになるお姉さんのような存在。
仕事自体は東京にいた頃とほとんど変化がないという松下さん。仕事部屋の窓を開けると、甲斐駒ヶ岳が見える。
アイデアに詰まったとき、ちょっと気分転換したくなったときなどには、カメラ片手に散歩に出ることも。「ぶらぶら歩いていると、すっきりしてくるんです」
「登山の魅力は、景色と達成感。途中苦しい思いもしながら山頂に到達し、そこに行かないと出会えない景色を目にしたときの達成感は、ちょっと言葉にならないですよね」
北岳山荘のテント場(朝日)
愛猫のキーチとリン。