ランドリシナ・ダニエレさん 山﨑 かおりさん 取材/2022.10現在
新しい場所で可能性を試したいと、
日本への移住を決意
吉田兄弟の津軽三味線の演奏を聴いて衝撃を受け、日本への憧れを抱くようになったというランドリシナ・ダニエレさん。イタリア語の勉強をしていたかおりさんと共通の友人を通して知り合い、SNSでのやり取りや互いの国を行き来しての遠距離恋愛を経て、ローマで結婚生活を始めました。
「当時はIT業界で働いていました。祖父母と母は革職人。家族で革工房を営んでいたので僕も革職人になりたかったのですが、僕が仕事に就く頃のイタリアは、安価な革製品が続々と市場に登場し、良質の材料を用いて手をかけて作っても、その価値が認められ、正当な価格で評価されることが難しくなっていると感じたため、将来性のあるコンピュータのプログラマーになりました」。
転機が訪れたのは、29歳のとき。請け負っていた仕事がひと段落着くタイミングで、日本への移住を決意します。「初めて日本を旅行したとき、日本には手作りのものを大切にする文化があること、今もちゃんと作られた良いものが評価され、正当な価格で売買されていることを知り、心を打たれました。その時のことを思い出し、日本で自分が革職人としてどこまでやれるか試してみたいと考えるようになりました」。
一方、「彼の思いを応援したかったし、日本で暮らすことに異論はありませんでした」と話すのはかおりさん。国を跨いでの移住にはさまざまな壁も感じたそうで、「場所へのこだわりはなかったのですが、インターネットで得られる情報には限りがあるし、気軽に見に行くこともできない。まったく知らない場所への移住はリスクが高すぎると判断せざるを得ませんでした」。そうした事情もあって、まずは、かおりさんのお母様が暮らす山梨に拠点を作ると決めたお二人。2013年1月に移住し、革職人への挑戦が始まりました。
自然豊かな笛吹市に開いた革工房
ブランドを立ち上げ、こだわりの革で作品作りに邁進
あれから9年、懸命に革職人としての腕を磨いてきたランドリシナさん。かおりさんと共にオリジナルブランド“Bottega Glicie(ボッテガ グリーチェ)”を立ち上げ、キーホルダーや名刺入れといった革小物や、財布、バック、ベルト、カメラアクセサリーなどを考案し、一点一点ハンドメイドするとともに、各地のクラフト市に出店したり、ネットショップをオープンしたりして販売してきました。植物由来の渋を使ってゆっくりとなめした革を使い、丁寧に仕上げた製品の評判は上々で、クラフト市で購入したりネットショップを通じて知ったりしたお客さんが、ユニークな作品を求めて遠くから工房を訪ねてくれることもしばしば。昨年からは、笛吹市のふるさと納税返礼品にも採用されているそうで、「長く使えば使うほど独特の艶が出て、革本来の魅力が感じられるはず。ぜひ大切に使ってほしい」と話します。
また、とりあえずの拠点にするつもりだった山梨をすっかり気に入ったそうで、笛吹市境川地区に自宅と工房を構えました。「山梨は、お天気の良い日が多く、とても気持ちがいいですね。どこへ行っても、文化財や公園、道路、トイレなど、公共の場がきれいなことにも感心します。きっと地域の人達に、そういうものを大切にしようという気持ちがあるからなんでしょうね。僕はそこがとてもいいなと思います」とランドリシナさん。お気に入りの場所を聞くと、「昇仙峡も富士五湖もすごく好き。金川の森、八代ふるさと公園、風土記の丘など、この辺りには自然が豊かで素晴らしい公園がたくさんあるので、休みの日には家族で遊びに行きます」。マウンテンバイクで自宅近くの山を走るのも楽しいそうで、「最近は息子と一緒に走りに行くこともあります。だんだん大きくなってきて一緒に遊べるようになってきたから、これからがますます楽しみです」と笑顔で話します。
一度は諦めた夢を追いかけ、山梨で心豊かな日々を手に入れたランドリシナさん。これからどんな作品を生み出すのか、期待が膨らみます。
二人三脚で営む革工房。すべて手作業で、一点一点丁寧に仕上げていく。
クラフト市に出展中のランドリシナさん。商品の良さをアピールしようと試行錯誤。
休日には家族で公園へ行くことが多いとお二人。自宅周辺には整備された公園がいくつもあり、行き先に迷うこともあるそう。