海外での農村開発などを支援する国際協力NGOで出会い、キャリアを積んでいた上原佑貴さん、若菜さんご夫妻。結婚後の2年間は、若菜さんの赴任先のインドで暮らしました。 「それまで僕も彼女も第三者としてプロジェクトを振興させるという関わり方をしてきていて、大きなやりがいも感じていました。けれど、インドで出会ったのは、地域に根を張り自分の地域を良くしようと踏んばっている人たち。彼らの姿、彼らの生き方に感銘を受け、自分たちも当事者として地域づくりに携わっていきたいとの思いが膨らんでいきました」と佑貴さん。 帰国後は愛媛県の海沿いに段々畑が広がる景観の良いまちで、柑橘栽培に取り組み、耕作放棄地も開墾していきました。「生活は楽ではなかったけれど、充実していました。けれど、住んでいた地域に風力発電計画が持ち上がり、環境や景観など深刻な悩みも出てきて。悶々としていたとき、たまたま早川町に移住した大学の先輩が訪ねてきて、『早川もいいぞ』と誘ってくれたんです」。
ちょうど夏休みだったこともあり、気晴らしを兼ねて家族で早川を訪れた上原さんご一家。 「一目で気に入りました。山深い感じがいいなと。そのときは、川遊びをしたり、バーベキューをしたりしただけでなく、早川北小学校の見学もさせてもらったのですが、そこもまた素晴らしくて。みんな早川町を気に入って」すっかり気持ちが移住に向かったと若菜さん。その後何度も足を運び、NPO法人日本上流文化研究所(上流研)の当時の担当者の協力のもとで家探しをして、2017年4月に家族で移住しました。
集落の維持・活性化に取り組む日々
移住相談や空き家の紹介も担当
早川町には、山の暮らしの調査・解明に取り組んできたNPO法人日本上流文化圏研究所があり、蓄積してきた記録を活用しつつ町の活性化に取り組んでいます。 僕は、学生の時代に大学の研究室仲間と調査ボランティアとして活動に参加したことがあったのですが、移住してからは、集落支援員として役場に籍を置きながら、上流研のスタッフとして、過疎高齢化した集落の維持・活性化に向けて何をしたらいいかということを住民の皆さんと一緒に考え実施したり、他地域と連携したりという活動をしていて、その一環として、移住定住支援も担当しています。
長らく途絶えていた奈良田地区の盆踊りの復活に携わらせてもらったり、 石垣を直すワークショップの開催を通じて集落が活気づいたりと、いろいろな場面で少しずつ成果を感じられるようになってきました。 移住者にも、地域の方にも、「とりあえず上原に相談してみようか」と思われる存在を目指し、日々笑顔で活動しています。
家族全員が集落に溶け込み、
山の暮らしや地域文化の継承者に。
移住前に頻繁に早川を訪れ、上流研に紹介してもらった家を見て歩きました。この家は、見た瞬間、長男が「この家がいい!」と声を上げ、その場で決めました。賃貸を考えていたのですが、家主さんから無償売買(譲渡)を提案され、戸惑いもありましたがその方の思いと共に受け継ぐことに。早川町の移住者住宅改修費補助制度も活用して地元の工務店に傷んだ場所を修復してもらい、快適に暮らしています。
現在、上の2人は早川北小学校にスクールバスで通い、自然体験を通した授業など豊かな教育を受けています。一方下の娘たちは、「山の暮らしを体験させたい」という妻の意向もあって、地域の方に三味線を習ったり、キノコ狩りや養蜂などご近所の方の日々の営みを手伝ったりと、妻と一緒にこの地ならではの経験を重ねているようです。また、近く耕作放棄地を借りて鶏を飼い、野菜も作るなど、家族全員がここでの暮らしを楽しんでいます。今後何が起こるかわかりませんが、常に前向きに取り組んでいきたいと思います。
上流研主催の「石積み学校in早川」。
移住相談会で体験談を披露
定番化しつつある盆踊り復活祭。
自作の鳥小屋で鶏を飼育中。
近所のおじいちゃんは上原家のヒーロー"まんのうがん" ※まんのうがん=山の暮らしに関わる全てを自分でできる知恵と技術を持った人
家の前の道で。