富士河口湖町
ジェイコブ・ライナーさん(40歳)
富士河口湖町在住。エコ建築家 エデンホームズ代表。アメリカ ニューヨーク州出身。2000年に富士北麓に移住。地球大使館を設立し、鳴沢村にソーラーカフェを開店。以来、有機農業やオーガニック食品の販売、農業体験スクールなど、持続可能な生活を推進するさまざまな活動を多角的に展開している。
[地球大使館]http://www.earthembassy.org/ja/
11年前、富士山と裾野に広がる雄大な自然に魅せられたエコ建築家のジェイコブ・ライナーさん。自身の運営するソーラーカフェを拠点に、古民家の再生や自給自足の生活の推進に取り組んでいます。
アメリカ・ニューヨーク州出身のジェイコブ・ライナーさん。大学卒業後に来日し、東京で建築家として活動していた彼が初めて上九一色村(現富士河口湖町)を訪れたのは、14年ほど前のことでした。「日本に来てしばらくは東京にいたんだけど、ゴミゴミしていて、人が多くて、とても息苦しかった。僕は、ニューヨーク郊外の緑豊かな場所で、いろんな虫や動物と一緒に育ったから、東京での生活には何となく違和感があったんだよね」。そんなとき舞い込んだのが、『精進湖の近くにパッシブソーラーハウスを造って欲しい』という依頼。そこで、「最初はほんの数カ月のつもりで気軽に」やってきたといいます。「来てみると、ここには素晴らしい自然がある。美しい古民家もある。しかも、富士山でしょ。東京までほんの1時間半なのに、こんなに素敵な場所があるなんて本当にすごいと思ってね…」。すっかりこの地に魅了されたジェイコブさん。依頼されたパッシブソーラーハウスが完成した後も、住み続けることになりました。
ジェイコブさんが居を構えたのは、精進湖周辺の集落。そこには、明治時代に建てられた古民家が立ち並んでいました。「僕はその一軒を借りたのですが、もう100年以上も経っているのに、家の構造はしっかりしているし、木々もとても美しい。それに、集落の人が家族みたいな感じなのもいいよね。最初こそ、『変なガイジンが来て何だろう?』って目で見られていると感じたけれど、挨拶をしたり、集落の活動に参加したりしているうちに信用されるようになって、僕もその仲間に加えてもらえた。すごく嬉しかったね。でも、住んでいる人はどんどん高齢化していて、空き家も年々増えていく。すごく寂しいし、残念だなぁって。それに、空き家になると、家もダメになってしまう。朽ちていくんだね。それで、今ならまだ間に合う、なんとかしたいと」、集落の古民家を一軒買い取り、リフォームして販売したところ、東京の家族が買い取って、移住してきてくれたといいます。「良かったし、すごく嬉しかったね。それに、これは一つのモデル。このアイデアで、古民家を残したり、集落を存続させたりということができるとわかったから、少しずつでも続けていきたいと思ってね」とジェイコブさん。現在3軒目の古民家を再生中。
近所の人や地元のサポートに感謝。これからは恩返しもしたい。
2000年には、エコビジネスを展開するグループとして地球大使館を設立し、オーガニック料理のソーラーカフェを開店。エコ建築家と並行して、有機農業の実践や野菜・ハーブティーなどの販売なども行ってきました。地球大使館の活動拠点でもあるソーラーカフェを、世界中から訪れる人々が出会い、意見を交換できる場にしていきたいと言います。「地元の人のサポートがあって、ここまで来ることができたから、これからは、その恩返しもしたい」とジェイコブさん。そのためにも「大使となって、地元と都会、地元と世界をつなげていきたい」と、熱く語ってくれました。
「大自然がありながら、東京にも近い山梨。僕はここで、田舎と都会をつなぐ活動をしていきたいんだ」と話すジェイコブさん。
気軽に食事が楽しめるカフェでもあり、地球大使館の活動拠点でもある、鳴沢村の"ソーラーカフェ"
ソーラーカフェのメニューには、自身の畑で採れた野菜を使用
東京のナショナルマーケットでも販売している人気のハーブティ
ジェイコブさんがリフォームをプロデュースした古民家には、古き良き時代の日本とモダンでポップなアメリカが融合した、独特の雰囲気が漂っている