北杜市
中森友一さん(65歳) 葉さん(58歳)
2012年4月、東京都八王子市から、北杜市大泉町に移住。築100年の古民家を自宅兼店舗に再生し、ギャラリーCafeを開店。
ギャラリーCafe 徒然草
オーガニックコーヒーやチキンカレー、ビーフシチュー、季節の里山料理が味わえます。
北杜市大泉町谷戸2078 電話:0551-45-7130 朝10時から夕方まで。水・木定休
北杜市大泉町に、ギャラリーCafe『徒然草』をオープンした中森友一さん、葉さんご夫妻。集落の方々にも温かく迎え入れられ、忙しくも、笑顔の絶えない毎日を送っています。
「いつの頃からでしょうか。自然に囲まれて心豊かに暮らしたいと思うようになりましてね」と穏やかに話し始めた中森さん。数年前から、田舎暮らしの情報誌「月刊ふるさとネットワーク」を定期購読し、「これは!」と思う物件を見に行ったり、現地見学会や東京で開催されるセミナーに参加したりしていたと言います。
「趣味で書き溜めて来た書画を飾り、多くの方に見てもらえたらと言う、漠然とした願いもありました」。一方、そんなご主人を冷ややかな目で見ていたのが奥様。「私は田舎育ちなものですから、何を好き好んで今更田舎に住まなければいけないのかと、当初は反対していました。でも、主人と一緒にあちこち見て回るうち、田舎も悪くないかなと」。奥様の態度が軟化するに従い家庭でリタイア後の生活について話す機会も増え、次第に、ギャラリーを開こう、板前だったご主人のキャリアを活かし、お茶を飲んだり食事をしたりしながらゆったりと過ごしてもらえるお店にしようといった、明確なイメージも定まっていったと言います。
運命の出会いに導かれて。
お二人がこの地を初めて訪れたのは、昨年7月のこと。「最初は土地家屋含めて800万円という破格の価格に魅かれたんですが、来てみると古くからの町屋地区で雰囲気がいい。スーパーや病院、温泉も近くにあって、すごく便利でいいなぁと」。ところが、肝心の家が荒れた状態だったため、これはダメだと肩を落として帰途についたと話すお二人。
しかし、思いがけないところから運命が回り始めます。「9月に甲斐適生活応援隊が開催したセミナーで、偶然にも虹梁建設(本誌P20)の社長さんと出会い、この家が話題になったんです。『一度再生の見積もりをさせてもらえないか』とおっしゃるので、正直に予算を伝えましてね」。しばらくすると、丁寧な手書きの報告書が送られてきた。「それを見て、心が決まりました」。
11月には着工。約半年の再生期間中は毎週のように足を運び、朽ちていた古民家が生まれ変わっていく様を存分に楽しんだと、揃って声を弾ませます。
温かく迎えられ、新生活をスタート
4月24日に入居。翌日には自治会の寄り合いに参加し、5日後にはギャラリーをオープンさせるという強行スケジュールでしたが、「建築中からご近所の方にお願いしてあったこともあり、すべてがスムーズに運び、温かく迎え入れていただきました。ちょうど家の前の桜が満開で、自然までが私達を歓迎してくれていると嬉しくなると同時に、ここで新しい生活が始まるんだとワクワクしました」と笑顔で振り返る奥様。
「ここでは、道行く人はだれでも挨拶を交わすのが当たり前。ふと気付くと、隣の奥さんが家の庭の草むしりをしてくれていたり、勝手口から声を掛けられたり…。外出から帰ると玄関先に野菜が置いてあったこともありました。最初は驚いたけれど、すぐに心地よくなりましてね。これが本来の人間の姿なのかもしれないですよね」。ご主人の言葉が、その満ち足りた表情とともに心にしみ入りました。
「古民家だからというのではなく、この家の姿に魅せられたんですよ」とお二人。
ご主人の手による看板と奥様が生けた季節の花が訪れる人を優しく迎え入れる。
築100年の古民家。お大尽だったらしく、申し分のない躯体に加え、そこかしこに凝った細工も見られる。
2階にあるご主人のアトリエ。「本格的に学んだわけではない」と謙遜するご主人だが、日々の暮らしの中で生まれた素朴な詩や版画に、心を打たれる人も多い。
1階はすべて店舗スペースに。座敷でゆっくりと寛ぐこともできる。