富士河口湖町
大岩あやさん(37歳)
熊本県出身。愛知県立瀬戸窯業高校専攻科終了、佐賀県立有田窯業大学ロクロ科終了。21歳の時に造形家として独立、窯の名を「青の風」とする。阿蘇郡西原村でギャラリーを開いていたが、2007年、陶芸の勉強のためアフリカ・タンザニアへ。帰国後、2008年、富士河口湖町でギャラリーをオープン。
富士山や湖、豊かな自然からインスピレーションを得て作品づくりをしている造形家の大岩さん。山梨での暮らしは人とのつながりも多く、表現の幅も広がっているといいます。
「自然の中にいると、不思議と創造力がわいてきます。すぐ目の前に富士山もあって、いつも自然からパワーをもらっています」。
創造力が働かない時は、小さな粘土を片手に近くの公園や湖に出かけるという大岩さん。自然を感じながらのんびりと粘土をいじっていると、いつのまにか小さな作品ができ、そこから大きな作品がつくりあげられていくことも多いといいます。
町の空き家バンクで見つけたという大岩さんの自宅兼ギャラリー「kamamoto gallery青の風」には、そんな自然の中で生まれた作品の数々が飾られています。灯りのともった作品が並ぶ一室は、自分で壁を塗り替え、床を張り、棚もつくったそうで、なんともいえないぬくもりのある雰囲気です。
今力を入れているアートでまちおこし
出身地の熊本から山梨に移り住んだのは、2年半前のこと。「仕事上、東京に近いところに住みたいと思っていましたが、田舎にしか住めないタイプなので、東京に近くて、2人の子どもたちも暮らしやすい場所をと考えてここに決めました。ギャラリーを開ける広い家が手頃な家賃で借りられて、買い物にも便利で、とても暮らしやすいです」。
作品づくりや、地域の観光施設や役場などでの個展開催など芸術活動に取り組む一方で、今力を入れているのが地域のまちおこしです。2つのボランティア団体に入り、地域の住民とともに、アートと絡めてシャッターの閉まった店が多い商店街の活性化を図る活動などアートプロジェクトを進めています。
「この町にはたくさんの芸術家がいて、観光施設もたくさんありますが、その2つがうまく結びついていないと思います。芸術家と町、そして住民が一緒になって取り組むことで、もっとすてきなまちづくりができ、この町のよさももっと打ち出せるはずと思ったのがきっかけです。熊本にいたころは空き店舗対策の店を借りていて、してもらうばかりでしたが、造形家として独立して16年目となり、そろそろ恩返しができればと思っています」。
人とのかかわりの中で何ができるのか
「最近はいろいろな人と会うことで、表現の幅も広がっているように感じます。最初は自分だけで小さく仕事をするのが楽しかったんですが、今は人とのかかわりの中で何ができるのかというのが楽しみです」と笑顔を見せる大岩さん。
山梨の自然だけでなく、この町での暮らしや人々とのつながりが、これからの作品づくりにどうつながっていくのか楽しみです。
素焼きのランプは素朴でやさしい灯り
ギャラリーの一角にはろくろがあり、ここから作品が生まれる
手洗いボウルも大岩さんの作品。洗面台などもすべて手づくり
ギャラリーには学生時代から現代までのさまざまな作品が並ぶ
船津商店街で進めている「河口湖アートプロジェクト」では、大岩さんのランプを酒造店や薬局などの店先に飾っている