佐山 保幸さん(46歳)/ 容子さん(45歳)/ 憂里香ちゃん(12歳)/ 雄志くん(10歳) 取材/2020.10現在
鎌倉にほど近い自然豊かな場所で育った佐山保幸さん。イタリアと日本で修業を積み、都内の有名レストランで料理長を歴任しながらも、「いつか自然豊かな景色の良い所で暮らしたい」と考えていたと言います。
「田舎暮らしを現実的に考えるようになったきっかけは、妻の2回目の妊娠でした。僕は仕事柄帰りが遅く、育児は妻のワンオペにならざるを得ない。1歳になったばかりの長女を保育園に預けようにも、待機児童は100人を超えていて難しい状況。このまま出産して暮らしていくのは妻の負担が大きすぎるので、なんとかしようと話し合う中で出てきたのが、地方への移住でした」。
実は奥様の容子さんも、イタリアと東京で修業を積んだシェフ。
当初は二人でお店を開くことを念頭に広く物件を探したと言います。「観光地を中心に見ていたのですがこれといった物件には巡り合えず、どうしたものかと考えていた時に妻の両親から提案されたのが、都留市内に所有する空地に家を建ててはどうかという話でした」。
考えてみれば、家族が増えて生活が大変になるから移住をするのに、全く知らない土地へ行ったのではかえって負担が増える。その点、奥様のご両親の近くならいろいろな面で助けてもらえるし、何より都留市は、雄大な富士山や三つ峠の素晴らしい眺望があり、水や空気もきれいで、思い描いていた田舎暮らしを実現できることに改めて気づいたという佐山さん。
まずは住まいを移すところから始めようと自宅を建て、2010年に移住しました。
3年間の東京通勤を経て、
イタリアンレストランを開業しました。
最初の3年間は東京の職場に通勤しました。都心までJRの通勤快速で約1時間半。座って移動できることもあり、都内に住み満員電車で通勤していた頃よりもむしろ楽でしたね。その後、2013年5月にイタリアンレストラン"ロカンダアブラッチ"を開店し、妻と経営しています。
東京時代は、電話一つで形も色も揃った野菜を配達してもらっていましたが、こちらへ来てからは、義父が栽培しその日収穫した自家野菜を主に使っています。虫に食われたり形がまちまちだったりしますが、それも含め味わい深い。どうしてこんなに美味しいんだろうと考えたら、やっぱり水が違うんですね。
それから"旬"。東京にいた頃は知識で判断していましたが、ここでは今日採れたものを使う。その地でその時期に採れたものが最も美味しい、すなわち"旬"なのだと気づかされ、目から鱗が落ちた気がしました。
店名の"ロカンダ"は、イタリア語で宿泊できるレストランの意味。
今は予約制でコース料理を提供していますが、いずれ2階に設えた客室を稼働させ、飲んで食べて楽しんで、そのまま泊っていただけるスタイルのレストランにしていきたいと思っています。
ロカンダアブラッチHP https://www.locandaabbracci.com/
理想的な環境で、
子ども達と豊かな時間を過ごしています。
店を開いてからは、自営業の強みを生かし学校行事にはすべて参加。日曜日を定休日にして、家族で過ごす時間も大事にしてきました。山梨には公園はもちろん、滝や温泉、史跡などもたくさんあり、遊ぶ場所には事欠きません。自然の中でいろいろなことを一緒に体験し、何気ない会話を通して思いを伝え合えるのは、とても良いですね。
子ども達も、おじいちゃんの畑を手伝うなど、自然の中でさまざまな経験を重ねながら元気にたくましく育っています。
娘がスポーツ少年団でバスケットボールを、息子がクラブチームでサッカーを始めてからは、練習に付き合ったり遠征に付き添ったりと、新たな楽しみも増えました。
パパ友、ママ友を通して僕も妻も人間関係が広がり、豊かな時間を過ごしています。
共に厨房に立ち、料理の腕を振るうお二人。
地場の食材を用いた本場仕込みの味とアットホームな雰囲気が魅力。
休日に遠出をしたり、おじいちゃんの畑を手伝ったり…。お店の駐車場でサッカーやバスケを楽しむことも。